Google Developer Day 2007 (GDD07)レポート

今日は会社を休み、Googleによる開発者のためのカンファレンスである「Google Developer Day 2007 (GDD07)」に行ってきた。普通に会社に行く時間に起きて、川崎→新橋→お台場というルートで出発。ゆりかもめに乗っていくんだが、あれは楽しいね。まわりはサラリーマンだらけだったが、私は半分観光客気分で東京見物を楽しむ。GDDの開催場所は、ホテル日航東京のホール。なかなか良いところ。

キーノートスピーチ

さっそく午前のキーノートスピーチが始まる。1つ目のセッションはStein Gregさんによるオープンソースに関する話。このGregさんは、ApacheSubversionPythonなど、数多くのOSSを手がけるすーぱーエンジニアで、Google社のエンジニアリングマネージャーをやっている人。以下にGregさんが話した内容をまとめます。

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そもそもグーグルは数多くのWebAPIやプロダクトをOSS、またはオープンな仕様として世に送り出している。元を辿れば、グーグル検索を、SOAPのAPIとして世にはじめて公開したのが2002年。で、2005年あたりからGoogle Codeというサイトを立ち上げ、現在はこのサイトを通じて数多くのAPIが公開されている。そしてユーザはこのAPIに自由にアクセスできる。
例えば、SitemapsAPIというものがある。これは、グーグル検索エンジンのクローラー(世界中のWebサイトをチェックして検索できるように目次を作るプログラムのこと)に対して、動的なページをしっかりとクロールさせて、検索結果としてマッチするように指示するためのAPI。このAPIの仕様はもちろん公開されているので誰でも使うことができるが、さらにこのAPIクリエイティブコモンズライセンスで公開されている。
APIを公開し皆につかってもらうためには(1)わかりやすいサンプルを作る、(2)わかりやすいドキュメントを作る、というのが、まず何よりも大切。そして、これは結構簡単。で、難しいのがライセンス関係の問題。たとえば、ちょっとこのAPIの仕様を変えたいなー、と思っても、ライセンスがややこしければ、気軽に変更を加えることが大変になってしまう。そこで、グーグルはこのAPIクリエイティブコモンズライセンスで公開することにした。
これは事実上、ほとんど制限なく自由に利用、改良してもよいことを意味する。これによって開発者は自信をもって、びくびくせずに、APIを使うことができる。その結果、このAPIはYahoo等でも使われるようになり、いまでは業界標準として多くの人に使われている。
グーグルはこのAPIで検索の実権を握りたかったわけではなく、だれでも自由に利用できることを目指している。これにより、Web開発者がハッピーになり、その結果エンドユーザもハッピーになり、最終的にはグーグルもハッピーになる、と。ここでグーグル専用のライセンスを新たに作ったりすると、利用者はまずそのライセンスについて調査する必要がでてきて、これは不幸だと。それよりも一般的に知られているAPLやBSDGPLライセンスを選んだほうが良いと判断した。
私企業が自分達の仕事の成果を無償で世に公開する、と言うことに関しては、たとえばAPIだけでなくGWTなどは、グーグルの企業としての戦略とは、実際にはほとんど関係ないといえる。戦略的なのはグーグルランクアルゴリズムとか、検索アルゴリズムとか、ほんとうに一部であり、その他の80パーセントのコードは、無償で世にだしてもグーグルにとっては何一つ痛くない。ならば、公開したほうが良いではないか、と。
また、多くの企業が普段からLinuxとかApacheなんかのOSSをバリバリ使っている。Linux+Apacheが90年代以降の、今日のインターネットを作ったと言っても過言ではない。だから、逆に何らかの利益を世に還元(repayment)するのは当然である、と。そんで、コミュニティーを大事にして、善意に満ちた環境を作ろうぜ、と。
また、一昔前はDBといえばオラクルかMSSQLサーバーしか選択肢がなかったが、現在ではMySQLPostgresQLは十分に実用に耐えうる品質であることがわかってきた(グーグル内部でももちろん使用している)。これにより、オラクルやMSはこれらの価格設定の見直しを余儀なくされた。また、もともとMSのインターネットエクスプローラーは5人(!)くらいのエンジニアによって開発、保守されていたらしいが、Firefoxは世界中のエンジニアが開発に関わっている。こりゃまずいと判断したMSは、IE部隊に100人のエンジニアを追加で投入したそうな。というわけで、OSSは世の中のトレンドをかき混ぜてしまうパワーをも持つ、という話。
トレンド、といえば、オープンソースが普及すると、どんどんソフトウェアってものが無料になってくる。そうなると大企業のビジネスの範囲は、ソフト開発から、サポートやサービスの分野にパワーをシフトしてくるようになる。企業もどんどんOSSに関わってくるわけだから、よりパーミッシブなライセンスが求められる。たとえば、あなたのお父さんやお母さんが何かサービスを利用するたびに、Apacheライセンスのことを気にする・・・というのは変ですよね。
というわけで、以上がオープンソースソフトウェアの世界、そしてグーグルの基本理念ということです。

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あとはガジェットやGoogle Gearの話が少しあってセッションは終了。

ふう、つかれた。続きは明日にでも。

(※ちなみにこの写真はGregさんではないです・・orz)